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第2章  第2話   獣王、出撃



 北エウロペ大陸でジェノザウラーのテストが行われてから2ヶ月、ここ南デルボイ大陸の移動実験基地ホバーカーゴでは、新型歩兵ゾイド、ガンスナイパーの最終調整テストが行われていた。

 次々と出現するターゲットを正確に破壊していくガンスナイパー。だがこの機体のテストパイロットはなにやら不満そうだった。

「ちょっとパパ〜!やっぱりこいつ火力が全然足んないわよ!やっぱりこの間テストしたヤツみたいにもう少しミサイルとか付けといた方がいいわ。」

「おいおいリノン、無茶を言うなよ。こいつは軍が正式採用する機体だぞ。お前は重装備の方がいいかもしれないが、それだとコストが掛かりすぎる。これでも今までのゴドスに比べたら大幅に強化されているんだぞ。」

 兄のレオンが彼女をたしなめた。だが、それでも彼女は不満そうだった。そんなリノンに責任者らしき人物が通信を入れた。リノンとレオンの父であり、科学者であるトロス博士である。

「よしよし、そのうちパパがちゃんとした重装甲ゾイドを開発してお前にテストを任せてやるからそれまで我慢していなさい。」

 とても運用試験中とは思えないような会話が続いていた。現在連邦の新型ゾイドの開発、調整を一任されているのはオギータ研究所が誇る頭脳、トロス博士である。彼は新型ゾイドの試験には極力軍人を起用せず、フリーの競技選手や自分の家族などにテストを任せると言う風変わりな人物であった。ゾイドの研究を私物化しているという批判も多いが、それ以上に実績を上げている為、軍は今のところ(おそらくこれからも)その事を黙認しているのだった。

「ようし、次は動く標的への試験だ。リノン、しっかり頼んだぞ。」

「は〜い。リノンちゃん、いっきま〜す。」

 次々と出現するスリーパーディマンティスをガンスナイパーは撃破していった。

「こいつで、ラスト〜!」

 最後の1機に狙いを定めた瞬間、突然目の前に漆黒のカヴァーをまとったゾイドが出現し、その標的を瞬時に粉砕した。

「識別不明の機体?!この私とやる気ね。受けて立とうじゃないの!」

 兄が止めるのも聞かず、漆黒の機体へ向け火器を浴びせるリノン。だが漆黒のゾイドは信じられない速度と瞬発力を見せつけ、あっという間にガンスナイパーの目前に姿をあらわした。その事態にレオンがシールドを駆って飛び出した。飛び掛かったレオンのシールドの爪が、謎の機体からカバーを剥ぎ取った。その機体には赤い獅子の紋章が描かれていた。

 レオンが機体のマークに気がついた。

「赤の獅子の紋章?!ってアーサーさんじゃないですか!」

 漆黒のそのゾイドはシールドライガーDCS−J、連邦軍が7台のみ生産し、最高のライガー乗りといわれるエースパーロット、レオマスターと呼ばれる者にしか搭乗できないと言われているゾイドである。

「はっはっはっは。2人とも立派になったじゃないか。」

「アーサーおじさんじゃないの!ほんとビックリさせないでよ!」

「悪い悪い。ちょっとしたお遊びだ。昔はよく相手してやっただろう?」

 屈託の無い笑顔でアーサーは笑った。

「久しぶりだなクレイジーアーサー殿、まあ、こっちに来てからゆっくりしてくれ。」

 トロス博士とアーサー・ボーグマンは旧知の仲であった。

「そんなにゆっくりしているわけにもいかんがね。まあ、茶の一杯でも頂いていこうか。」


 ガンスナイパーの試験を済ませたトロス一家は、アーサー・ボーグマンを連れて格納庫に向かっていた。アーサーに新型ライガーを見せるためだ。

「クレイジー・アーサーの事だから、すぐにでも新型が見たいだろうと思ってな。準備は済ませてある。いつ乗ってくれてもいいぞ。」

「そいつは楽しみだ。今度の新型の話はレイから聞いているからな。そうとうなじゃじゃ馬らしいな。」

「お前さんにとってはそっちの方が嬉しいんだろ?期待してもらって結構だ。気性が激しくて今まで誰もまともに乗りこなしてないくらいだ。」

 そこへリノンが口をはさんだ

「ところでアーサーおじさん。よくおじさんのことをクレイジーアーサーっていわれているのを聞くんだけど、なんで“クレイジー”なんてあだ名で呼ばれているの?」

「それはパパが教えてあげよう。」

 トロス博士が語り始めた。

「アーサーはな、このキャリアと年からいえば、とうの昔に将軍になっていてもおかしくないわけだ。事実同期の連中で将軍をやっている人も何人もいるしな。だけどアーサーはな。」

 トロス博士の話をさえぎって、アーサーが照れくさそうに話し始めた。

「おいおい、そんなに誉めるなよ。まあ、そこからは俺が教えてやろう。俺が昇進なんか勘弁なのはな、死ぬまでゾイドに乗っていたいからだ。昇進なんかしてしまうとゾイドの操縦どころじゃなくなって、デスクワークだとか部隊の指揮なんかせにゃならなくなる。だから昇進の話がでるたんびに問題起こしてやって遅らしてやってんのさ。それで階級はいまだに少佐ってわけだ。だから言われてるのさ、“クレイジー”だってな。」


 格納庫に到着したアーサーは、そこに待ち受けていた新型ゾイドを見ると歓喜の声を上げた。

「ほう、こいつか。一からの新型ではなくシールドの強化型というわけか。」

 トロス博士が奥ゆかしげに解説を始めた。

「わかりやすく言うとな、こいつはシールドライガーを特殊なプログラムを用いて進化させているわけだ。まあ、こいつのオリジナルは施設ではなく戦場でいきなり進化したそうだがな。」
 流石のアーサーも目を丸くした。

「戦場で進化しただと?!何なんだそりゃ。」

「ああ、確かに前代未聞の話だ。どうもこの進化のシステムの事をガイロスのほうではオーガノイドシステムと呼んでいるらしい。さらに驚くべき事はこの技術は古代遺跡を発掘して入手した技術だそうだ。」

「おいおい、地球人がこの星に来る前にすでにデタラメな技術を持った連中が住んでいたって言うのかよ。こいつは驚きだな。」

「まだまだ話はそれだけではない。このシステムはオーガノイドという金属と有機的なものの両方の特性を持ったゾイドでな、これに組み込まれているプログラムでゾイドコアを活性化したり進化させたりということができるらしい。とりあえずオギータ研究所の方で解析をすませて、プログラムの摘出に成功したわけだ。」

「難しい話はよくわからんが、そのシステムとやらを前例のあるシールドライガーに組み込んだ、というわけか。」

 トロス博士は新型ライガーの隣に置かれていたガンスナイパーを指さした。

「他にもオリンポス山からの生還者たちが持ち帰ってくれたデータを元にしてこいつの開発も出来たわけだ。他にも次期主力戦闘機のストームソーダーにも組み込まれているぞ。まあそのオーガノイドシステムにはレベルがあってな、他の機種は相当落として組み込んでいるんだ。」

「そうでもしないとほとんどの連中には扱えない、ってわけか。」

 まあ、そんなところだ、といった顔をした後でトロス博士は切り出した。

「当然と言えば当然なわけだが、ガイロス帝国は少なくとも10年以上はこいつの研究を行ってきているのは間違いないわけだ。今までほとんど確認されたことはないが、オリンポス山頂上付近ではどうも実戦投入されていたらしい。」

「これから先、当然連中はこの技術で強化したゾイドを投入してくる、ってわけか。」

「そういうことだ。それ故、彼らとの差を一刻も早く縮めねばならんわけだ。」

「だから俺にこの新型を使ってくれって命令が出たわけだな。」

 目を輝かせながらアーサーは言った。

「ところでこいつの名前はなんて言うんだ?」

 子供のような笑顔をうかべてトロス博士は答えた。

「ブレードライガー。それがこいつの名前だ。」

「ブレードライガー、か。確かに攻撃的な奴らしいな。」

 その時、スピーカーから係員の声が響いた。

「トロス博士、軍から緊急任務のため新型機の搬入を求めてきました。軍用機を直接向けるので受け入れ態勢をととのえてくれとの事です。」

 アーサーは残念そうな顔をした。

「どうやら任務が早まっちまったようだな。試運転もなしに実戦投入になるかもしれんが、お前さんの腕を見込んで気にしないでおくよ。お茶は又今度頂こうかな。」

「そういうことならしかたあるまいさ。お前さんのことだから心配はしていないが無事に戻ってこいよ。そうそう、もちろんデータも忘れずにな。」

「ああ、期待していてくれ。」

 トロス一家らが見送る中、ガンスナイパー3機とブレードライガーを搭載した輸送機が離陸していった。
 情報によると内エウロペのマダガスカル島に新たな古代遺跡が発見され、そこに帝国軍が向かう可能性が極めて高いという情報がもたらされたからだ。

 時にZAC2100年2月、ブレードライガーとジェノザウラー、アーサー・ボーグマンとリッツ・ルンシュテッドの両雄は、内エウロペ海マダガスカル島にて相まみえようとしていた・・・・。



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