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ゾイド星戦史外伝
アルダンヌの戦い
銀河系大開拓団を組織 
 銀河開拓船グローバリー3号は、新しい星への夢をのせて、まもなく第3宇宙ステーションを飛び立とうとしていた。
 世はまさに宇宙時代。人類はすでに太陽系のすみずみまで進出し、全惑星を生活に役立てていた。当然、科学者の目は銀河系全体に向けられており、無人探査船による調査は進んでいた。
 人間が生存できそうな惑星が確認されると、地球連邦では銀河系大開拓団を組織した。科学者、冒険家をはじめ、移民を決意した人など、宇宙にそれぞれの夢を実現しようと、多くの人達が集まってきた。

 新しい星を目ざして、数せきの宇宙船がすでに出発している。グローバリー3号も旅立ちを前に、準備が急ピッチで進められていた。乗客はすでに宇宙ステーションの出発ロビーで待っている。
 その中にジョーがいた。生物学者を父に持つ彼は、子供のころから自然の生き物が大好きだった。これまでに昆虫や豚、羊など、約70種類の生き物を育てているほどだ。
 父親似のジョーを、母親は苦笑しながらも温かく見守ってきた。
 ジョーは16歳。新しい星の生物反応に、まっさきに開拓団参加を決意したのはジョーだった。
「地球以外にも生物がいるなんて、ぼくはついているよ。ぜひ、この目で見たいんだ」
 ジョーの熱意に、両親は家族全員で移民することにしたのだった。

地球から6万光年の旅
「グローバリー3号、発進!」
 すでに冷凍睡眠に入った乗客、乗員を乗せて、グローバリー3号は、ゆっくりと宇宙ステーションを離れていく。すべての運行は、コンピューター制御だ。
 やがて巨大な船体は、未知の宇宙空間へとすいこまれていった。

 どのくらいの歳月が流れただろうか。耳もとでかすかにひびく音楽に、ジョーは深い眠りからさめた。冷凍カプセルの扉がひらくと、両親は船室でお茶を飲んでいた。
「おはようジョー。ここはどこだと思う。地球から約6万光年。銀河系の中心をはさんで、正反対の位置なんだ。冷凍睡眠と超光速航行の旅、いかがですか」
 おどけてみせる父親に、快適なせん無い生活であることがわかった。
 この宇宙旅行では、目的の星へ近づくまでに、何度か船内生活がおこなわれるのだ。1回の期間が約1ヶ月。それ以外の期間は全乗り組み員が冷凍睡眠というわけだ。
「6万光年か。なんだか信じられないな・・・・・・。でも、どうして冷凍睡眠のままで、目的地までいかないの」
 不思議そうにたずねるジョーに父親は、
「この船は開拓船だけど、調査船でもあるんだ。すべてのデータが、今後の宇宙航行の参考になるんだ。船内生活の状況も分析され、データとして地球に送られている。
 船内生活が重要なのは、ジョーにもわかるだろう。もしもだ、目的の星に着いて住めなければ、地球にもどるにしても、ほかの星にいくにしても、しばらくは船内生活をしなければならないからないからな。
 それにもうひとつ、この船には仕事があるんだ」
 そのとき、船内放送をつげる、メロディーが流れてきた。

不思議な星を発見!
「みなさんおはよう。わたしはこの船のキャプテンです。現在、地球から約6万光年の位置を航行中ですが、われわれは不思議な星を発見しました。
 右前方の青い星がそれです。太陽系の太陽に似た星を中心惑星のようですが、生物反応があります。
 しかも、地球とたいへんよく似た大気をもち、かなり大型の生物もいるようです。
 くわしく調査するかどうか、緊急会議を開き、検討したのですが、非常に金属反応が強い星なのです。多数の金属層が表面にも露出しているようです。どうもわれわれが目的とする星にくらべて、生活するには適しているとの結論はえられませんでした。
 よって、調査は地球にまかせるとして、われわれは旅をつづけることにします。
 なお、これまでの調査結果を知りたいかたは、データバンクで引き出せます」

「こりゃすごい!地球じゃ発見されていない星だ。さっそくデータを取り出してみよう。
 ジョー、もうひとつの仕事とは、これなんだよ。もし、目的の星よりも生活に適した星が発見されたら、目的地を変えられるんだ。
 より快適な星であったほうが、いいに決まっているからな。
 さて、金属反応の強い星とは、どんな星なんだろう」

冒険商人たちが反乱
 しかし、乗客の中には、結果に不満のものもいた。冒険商人といわれる人たちでである。
 冒険商人とは、こういった宇宙開拓船に乗りこんでくる商人たちだが、中には太陽系で悪どい商売をしていたものもいた。
 グローバリー3号に乗り込んだ冒険商人たちも、悪どくかせいで、身をかくすために乗りこんだグループだった。
「緊急事態発生!乗客数10名が強行脱出をはかり、暴動をおこした模様。乗客のみなさんは船室内で、つぎの指示を待ってください。なお、ドアはロックしてください!」
 スピーカーからは爆発音や銃声の音に混じって、急をつげるアナウンスが流れてきた。と、強い衝撃が船内にはしった。
 火災を知らせる警報がなりひびいている。
 ジョーたちは、快適なはずの船旅から、いっしゅんにして不安な状態へと放り出されてしまった。
 次の放送が入るまで、そんなに時間はかからなかった。しかし、ジョーたちには1時間にも、2時間にも感じられた・・・・・・。

グローバリーが不時着
「乗客のみなさん、キャプテンです。冒険商人ら数10名が、会議の決定に反して、暴力で小型船をうばい脱出しました。その際、この船の主要機関が破壊され、これ以上の航行は不能となりました。われわれも、先ほど報告した星へ不時着するしかありません。ただちに着陸準備にかかってください。」
 冷静な声がひびく。外を見ると、小型船がどんどん遠のいていくのが見える。
 グローバリー3号はガクンと船首をさげると、冒険商人を追うかのように、右へ大きくせんかいしはじめた。

 大地がぐんぐん近づいてくる。グローバリー3号は、必死にバランスを保っている。
「船首をあげろ!船首をあげるんだ!!」
 グワァーン、ガガガガー!グローバリー3号は巨大な山脈の中、赤茶けた大地に、どうにか不時着することができた。
 ゾイド暦2029年のことである。

アルダンヌの森で待ちぶせ
 アルダンヌの森は、不気味にざわめいていた。風は吹きあれ、雲は低くたれこめている。時おり雲の間から稲光がはしり、はるかかなたの山すそを照らしている。
 ヘリック共和国陸軍・第2師団突撃大隊・第3分隊長・バラン大尉の乗り物は指揮用ゴルドス。先ほどから丘陵地帯の一角にとどまっていた。
 ゴルドスの全身には、緑色の濃淡で迷彩がされ、胴体から10本の通信用アンテナがつき出ている。背中には司令室が取り付けられていた。
 室内ではバラン大尉と副官、そして通信士が、偵察に出たグランチュラからの連絡をじっと待っていた。
 ゾイド暦2032年10月。50年以上にもおよぶヘリック共和国とゼネバス帝国との戦いは、あいかわらず一進一退をつづけていた。

 ゾイド大陸中央山脈の高峰、万年雪をかぶったホワイトロック山につらなる山やま。その一つのふもとにダリル高原があり、西側一帯のうっそうたる森林が、アルダンヌの森。
 森の西半分は凹凸のはげしい丘陵地帯となり、ジョラタン峡谷へとつながっている。
 峡谷をくだると、やがて草原地帯へ。その先は、トビチョフ川が蛇行するタイガ(寒帯森林)地帯である。

 ゼネバス帝国軍の大部隊が、このタイガ地帯のはずれを移動中との情報が入ったのが4日前。ただちに数頭のグライドラーが偵察に出たが、すべて消息をたってしまった。
 次に高速飛行用に改造されたペガサロスが偵察に出たが、悪天候のために引き返したのだった。
 毎年このころになると、中央山脈の反対側、ウィルソン平原からの暖かい風と、ジョラタン峡谷にそってふきつけてくる冷たい風とがぶつかりあって、この地方はかならず嵐になるのだ。
 はじめに偵察にでたグライドラーも、とつぜんおこった嵐にまきこまれたか。それとも帝国軍の対空砲火にやられたか、それはわからない。
 だが、その2日後、情報収集のため、嵐をついてジョラタン峡谷をくだっていったゴルゴドスは、谷の入り口近くで、さかんに飛びかう帝国軍の暗号無線をキャッチ。しかし、報告後、やはり行方不明となった。敵に発見され、攻撃を受けたのだろうか。
 とにかく、この嵐にまぎれて敵の大部隊が強国をのぼってきているのは、まずまちがいなかった。

現在、帝国軍は、無線の使用をやめているらしい。傍受のためのスピーカーからは、はげしい雑音が聞こえるばかりだ。バラン大尉は少しイライラしていた。
『第2師団長・ターナー少佐からの援軍は、まだダリル高原のはるか後方だ。こうなったら自分の第3分隊だけで、敵が峡谷から出てくるところをたたくしかない。
 布陣はほぼ完了したというのに、ゴジュラスにはこまったものだ。あの大きなヤツが動きまわっていたんでは、帝国軍の偵察隊に簡単に見つかってしまうぞ・・・・・・』

ゴジュラスはまだか
 もともとゴジュラスは自意識が強いメカ生体だ。それだけに、ふつうの状態でも操縦がむずかしく、パイロットはゴジュラスの気まぐれに泣かされていた。
 それが、興奮しているとなると、なおさらだ。戦力は敵のほうが、はるかに大きい。待ちぶせが見つかったら最後だ。
 雷がはげしくなり、大つぶの雨がふりはじめた。風も強い。
「ありがたい」と、大尉は思った。このひどい天候では、相手の偵察力も半減するだけに、バラン大尉は大きく息をついた。

 ジョラタン峡谷につながる3つの谷。そこに、それぞれ1頭ずつの偵察隊グランチュラ。
 真中の谷につながる丘の斜面に配置された、切りこみ隊のスパイカー5頭、遊撃隊ゴドス3頭。そして、丘の頂上付近に指揮用ゴルドスが位置している。
 そのやや後方、丘のむこうに身をかくすようなかたちで、2頭のゴルゴドスが配置についていた。ゴルゴドスはもともと偵察用なのだが、この作戦では、胴体両側に連射ロケット弾ポッドをつけて、支援任務についている。
 さらに3頭の人員輸送用ハイドッカーが、それぞれ10名ずつの歩兵を乗せて、ゴルドスの前方にいる。
 しかし、攻撃力のかなめであるゴジュラスだけは、まだだった。

頭上を巨大な物体が・・・
「大尉、いまのうちに少し休まれてはどうですか」
 副官のことばにバラン大尉はうなずくと、楽な姿勢で座席にすわり直し、目をとじた。
『ゴジュラス、早く配置についてくれ。おまえがたよりだからな。そういえば・・・・・・、ジョーは元気にやってるだろうか。
 グローバリー3号とかいう地球の乗物がとつぜん大空からふってきたのは2年前だった。
 オレは当時、偵察隊を指揮して、中央山脈にある敵の前線基地をさぐる任務についていた。
 偵察に出て2日目だったか。夜明けとともに前進を開始したわれわれは、敵の偵察隊を発見。つかまえようとしたが失敗して、やむなく撃ちあいになったのだった。
 いま思えばオソマツな武器だったなあ。1日中戦っても、決着がつかない。夕日が沈むころ、やれやれ、陽が沈めば休戦だと思っていると、とつぜん、ものすごい音が耳に飛びこんできた。
 それまで戦いに夢中で、気がつかなかったのだろう。音のするほうを見上げると、見たこともない巨大な物体が、われわれのほうをめがけて飛んでくる。耳をやぶるような大音響、体が熱くなる。と、頭上をこえて、その巨大な物体は、中央山脈中腹の平地へとつっこんでいった。
 大地をゆるがす大きな衝撃。オレは足をとられ、ぶったおれていた。もう戦いどころではなかった。オレは部下に、飛行物体の調査を命じると、いちもくさんに落下地点へかけだしていた。
 オレはそこで地球人にであった。』

ジョー親子のわかれ
『われわれと同じような体つきをした、彼らを見たとき、かつて、この中央大陸をおそったという、暗黒大陸のナゾの軍団かと身震いした。
 しかし、ようすがおかしい。戦いをしかけてくるでもなく、物体から出てくる生き物はきずつき、みをまもるようにひとかたまりになっている。
 とにかく本隊につれかえろうとした。ここでもゼネバスの偵察隊と彼らをうばいあうはめになった。
 彼等の悲鳴がひびく。なにをしゃべっているのか、わからない。その中で、ひときわ大声でさけんでいたのがジョーだった。
 帝国側へつれさられた仲間のほうへ、必死でかけだそうとする。それをおさえる部下。あれが親子のわかれだったとは・・・・・・。』
『地球人のことばがわかるようになると共和国は一変した。地球人の技術がどんどん取り入れられ、武器も強力になった。
 メカ生体だって戦闘力は増す。一日中休まずに使用できる・・・・・・。戦いは死者を多く出し、残酷になってしまった。かつてのように、全民族がなかよくくらしていた時代は、もうもどってこないのだろうか・・・・・・。』

帝国側に冒険商人が・・・・・・
『それにしても、ゼネバス帝国側までが、地球人の手で武装強化されていたとはな。帝国に潜入した偵察員や、共和国にいる地球人の話しから考えると、どうも、あのグローバリー3号の運命を変えた、冒険商人らのしわざのようだ。どこにでも、悪いやつらはいるもんだ・・・・・・。
 ジョーに2度めにあったのは、ヤツがゴジュラス用の乗務訓練を受けているときだった』

 雷雨がはげしくなる。くぼ地にいるグランチュラのコクピットの中で、パイロットは緊張していた。
 待ちぶせである以上、むやみにレーダーはつかえない。逆探知の心配があるからだ。グランチュラの広角調音器とパッシブ・レーダー(相手の出す電波ををとらえるレーダー)、それに自分の目がすべてなのだ。
 しかし、外はほとんど見えない。聴音器からは木の葉をたたく大つぶの雨の音が入ってくるだけだ。ボリュームを少ししぼったパイロットは、熱源探知機がつかえるよう、グランチュラの姿勢を少し高くした。
「やれやれ、中腰だ。かわいそうだが、しばらくがまんしてくれ」
 パイロットはグランチュラをいたわった。
 森の奥で、なにかが動いた気がした。パイロットは熱源探知機をチェックする。たしかに移動している。夜行性動物かもしれない。
 静かにグランチュラの姿勢を低くさせると、パイロットは風防カバーをあけて、外に飛び出した。雨が横なぐりにふきつける。土がやわらかくて走りにくい。おまけに木の根や枯れ枝が足にからみつく。

偵察用マーダだ!
 なにか大きなものが視界を横ぎった。帝国側の偵察用マーダだ。迷彩され、背中では小型レーダーがグルグルまわっている。コクピットの風防は共和国側のゾイドと同じように、上半分が透明で、視界を広くとっていた。
 マーダが視界から消えたところで、パイロットはトランシーバーのスイッチを入れ、打電ボタンをおした。
 稲光がはしり、はげしく雷鳴がとどろく。
 グランチュラにもどったパイロットは、コクピットに飛び込んだ。
 静かにグランチュラをおきあがらせたとき、広角聴音器から木をふみたおす音が入ってきた。熱源探知器に反応が3つ。風防カバーを少しあげて、赤外線双眼鏡でのぞく。
「いた、ゲルダーだ」
 ゆっくりとグランチュラを、くぼ地から後退させて、パイロットは、
『敵発見、攻撃隊確認』
の短い暗号を、ふたたびバラン大尉に打電した。

敵を包囲網に入れろ!
「大尉、入電です。左手の谷です」通信士の声で、バラン大尉はわれにかえった。
「規模は」
「まだです。現在、脱走中と思われます」
「第2報、入電。偵察用マーダ2、ゲルダー3、後続部隊の存在は未確認、以上」
「警報を出しますか」と、副官。
「もう少し待ってみよう。先に入ったマーダが、スパイカー隊のラインに近づくのはいつごろだ」バラン大尉の声がひびく。
「直進していれば、15分後です。」
「その時点では少し早いな。スパイカー隊にまかせるとしよう。とにかく、できるだけ多くの敵を、包囲網の中に入れるんだ。ゴドス隊に伝令をだせ。谷の入り口をはさみこむ位置に進出させるんだ。」
 副官は司令室からでると、ゴルドスの横で警備中の兵士に指令をつたえた。

 まもなく、3名の兵士が伝令として、闇の中へ消えていった。
 バラン大尉はそれをジッと見つめていた。

メカ生体は生き物だ
『それにしても、地球人がくっつけた装置はどうだろう。たしかに、戦闘兵器として、メカ生体を強化した。
 運動力を強くするパワーアシスト。瞬発力を10倍ほどにする、エネルギーブースト。
 武装だって、まえとはくらべものにならないほど強力なものにおなって、われわれもはじめは喜んだ。地求人だって胸をはって、
「この装備があれば、勝利はあなたがたのもの、戦いはすぐに終わりますよ」
などといってたものだ。だが、実際はどうだ。
 地球人たちは、メカ生体を生体ではなく、機械として見ていたんだ。地球では金属に生命はなく、人間の道具として利用されているという。
 しかし、ここはゾイド星。オレたちとメカ生体とは、同じ生き物なんだ。強力だが、重い武装をされ、むりやり走らせられる身を考えれば、だれだってわかりそうなものだ。
 オレたちだって、この新装備のあつかいに、まだなれていない。これまでだっにケガ人だって、どれだけでたことか。
 本当なら、こんなあぶなっかしい装備ははずしたほうがいいんだが・・・。帝国側が、われわれ以上にメカ生体の武装を強化しようとしてるとなると、そうもいってられなかったからなあ。
 とにかく、パワーアシストやエネルギーブーストに、われわれもメカ生態も、なれるしかないんだから、こまったものだ・・・・・・。』

 雷鳴がとどろき、かぜがはげしく立ち木をゆさぶる。その中で、じっと動かないものがある。スパイカーだ。
 パイロットはコクピットの中で、かるく目をとじていた。この雨ではいくら目をこらして、外を見ても意味はないからだ。
 だが、ふいにピンとくるものがあった。目をあけて、コントロールレバーをおす。姿勢を低くしていたスパイカーが、ゆっくりとおきあがった。
 パイロットは、ふと思いついて、スパイカーのコントロールをはずした。近くになにかいる。スパイカーの攻撃本能にまかせるのだ。
 ゆっくり身がまえる、スパイカー。

マーダーの頭が落下
 目のまえの木が、ガサッとゆれた。偵察用のマーダだ。おどろくマーダのパイロットが見えた瞬間、スパイカーのハイパーサーベルが横なぐりにふられた。マーダの頭がズシンと落下。爆発はしない。
 パイロットは『偵察用マーダに接触、たおす』の暗号を送った。

帝国側の照明弾だ
 同じころ、バラン大尉は偵察隊のグランチュラから、『敵の集団発見』の暗号を受けていた。いよいよ一団が、谷から出てきたようだ。
 情報を総合すると、どうやら先発隊のようだ。
「よし、警戒暗号を出せ。待ちぶせはそのまま、敵をできるだけ近づけろ」

 とつぜん、森でビーム砲の発射音がしたかと思うと、爆発炎上するのが見えた。森全体が明るくなる。
 戦闘がはじまったようだ。いくつかの火玉が花火のように、垂直にのぼっていく。帝国側の照明弾だ。
「やれやれ、見つかったな。やむをえん、無線封鎖解除。スパイカーは退かせろ。敵の位置をたしかめ、ゴルゴドス隊は攻撃準備。
 ゴドス隊は現在地を確認のうえ、そこにとどまらせろ!」
 バラン大尉の命令がとぶ。
「ゴジュラスはどうした!どこにいるんだ!」
「現在急行中」
「急がせろ!敵の本隊をおがむまえに、顔を見せるんだ」
 丘のむこうから、数10本の火玉があがり、放物線をえがいて落下していく。対地攻撃用に改造されたゴルゴドスの、ロケット弾攻撃がはじまったのだ。
 森の一角へ、つぎつぎとすいこまれていく。
 6頭の攻撃用マーダトゲルダー4頭が、ことごとく粉砕された。

ゴドスが体あたり
 残った2頭の攻撃用マーダトゲルダー1頭が、あわてて谷の方へひき返す。そのまえに、ヌッと立ちふさがった遊撃隊ゴドス3頭。
 ウエイトの軽いマーダは、ゴドスの体あたりや足ばらいで、バランスをくずす。たちまち組みふせられて、バルカン砲を撃ち込まれ、機能停止。
 ゲルダーと正面で向かいあう形となったゴドスは、とっさに左に体をかわしていた。2門の電磁砲と3門の衝撃砲をまともにくらっては、ひとたまりもないからだ。
 左にまわりながら、尾の一撃をコクピットに。ゲルダーがたじろぐスキに、側面から攻める。
 片方の電磁砲と前足に手をかけ、いっきにひっくり返した。腹部にバルカン砲を撃ち、勝負はついた。

なに腰をぬかした?
「損失はスパイカー1頭、ガイサック2頭で修理可能。パイロットは1名死亡、・・・・・・」
 副官の報告をうけたバラン大尉は、
「敵の兵力は偵察用マーダが2、攻撃用が8、ゲルダーが5だったわけか。偵察用マーダ1頭をとりにがしているが、こちらの全戦力はわかるまい・・・・・・。
 主力部隊が警戒して、しばらく動かずにいてくれるとありがたいのだが。派手な花火もうちあげたことだしな。
 なに、ゴルゴドスが1頭腰をぬかした?兵員輸送用ハイドッカーと交代させろ。ところで偵察隊はどこにいる」
「峡谷の入り口まで進出しています」
 捕虜をしらべるため、大尉は外に出た。あいかわらず風雨が強い。

 ちょっとまえまでは、こんなに苦労して夜戦なんかすることはすることはなかったがなあ、と大尉は思っていた。
『これまで最大の戦いといわれた、砂漠の戦いにしても、いまから思えばのんびりしたものだった。
 もっぱら戦いは昼間だけ。夕ぐれともなると自然に兵をひきあげた。
 メカ生体どうしの戦いは、格闘戦が主体だった。飛び道具は、命中率のあまりよくない火薬式の大砲か、原始的なロケット弾くらいしかなかった。
 地球人のもちこんだビーム砲やミサイルは、メカ生体を一撃でバラバラにしてしまう。それにあの命中率。
 たちまち、戦いは一変した・・・・・・。
 レーダーの発達で、夜間戦闘も昼間と変わらないくらいに、できるようになり、おかげでこんな天気の真夜中に大乱戦だ』
 バラン大尉は、不気げんに、捕虜のいるテントへ入っていった。

「グランチュラが2頭、音信不通?どういうことだ!」
 司令室で副官がさけんだ。

大尉、敵の反撃です!
 共和国軍はゆだんしていたようだ。とつぜん、森の奥からパルスビームが飛んできた。雨に拡散されてはいるが、数が多い。いくつかは、スパイカーやガイサックを直撃した。
 あわてて後退するスパイカーとガイサック。それを追うようにあらわれたのは、帝国軍のゲーターだった。その数数10頭。地を低くはう姿は無気味だ。
 うしろからゲルダー5頭、いずれの背中にも数名の武装兵士を乗せている。

 爆発音にバラン大尉は、あわててテントから飛び出してきた。
「大尉、敵の反撃です」
「なにっ、もうきたか。状況はどうなっている」
「それが、妨害電波が強くて、さっぱりつかめません!」
「だとすると、ゲーターだな。背中のアンテナから電波を出しているにちがいない。話しには聞いていたが、クソッ、ゆだんした!武装ゴルゴドスはつかえるか。ゴジュラスはどうした!」
「ゴルゴドスは1頭がロケット弾をこめているところ。もう1頭は武装をつけかえているところです」
「あの腰ぬけか」
「そのあと弾をこめますから、あとは30分は必要です。ゴジュラスはまだ到着しません!」
「とにかく歩兵は歩いて丘をくだらせろ」
「了解!」

 ガイサック隊は、とりあえず、くぼ地に体をうずめた。尾を少し立て、ロングレンジガンはつき出したまま。相手が見えるようにコクピットも一部はつき出し、攻撃の姿勢をととのえた。
 雨でかすんでいるが、前方を2頭のゲーターと1頭のゲルダーが進んでいく。
 ねらいをさだめ、ロングレンジガンのボタンをすばやくおす。雨でビームが拡散することを計算に入れて、1頭につき、ビームを3回ずつあびせたわけだ。
 さすがに、装甲の厚い帝国側メカ生体も、これではたまらない。ゲーターはふき飛び、ゲルダーは機能を停止した。

ガイサックが大爆発
 くぼ地を出て、移動をはじめたガイサックは、一瞬ビクッと歩みを止めた。見えない敵から身を守ろうとする。
 次の瞬間、体中から青白い火花をちらして、ガイサックは大爆発をおこした。勝ちほこったように、あらわれたゲーター。
 だがそのとき、草むらから数本の白い煙が、ゲーターめがけてのびていった。そのうちの1発が、ゲーターの腹に命中、機能を停止した。
 歩兵隊の反撃がはじまったのだ。メカ生体にとって、対メカ生体ミサイルやバズーカ砲をもった歩兵というのは、意外とやっかいな敵だった。
 ゲルダーからも、帝国軍の武装兵士がおりてきて、歩兵どうしの撃ちあいもはじまった。
 バラン大尉は、兵員輸送用ハイドッカーも戦線に投入した。歩兵相手にはなんとか戦えたが、ゲーターのガトリングビーム砲のまえには、なすすべもなかった。
 戦力はあきらかに共和国側の不利だった。しかし、なんとかもちこたえていた。歩兵が対メカ生体ミサイルやビーム銃で、ゲーターやゲルダーを足止めする。そこをうしろからゴドスがしとめているのだ。

土の中からモルガ出現
 どうだろう。とつぜん、地面がもりあがり、土の中から巨大な影がおどり出た。あわてて逃げる兵士たちの上に、その影はのしかかるようにして動き出した。
 敵も味方もない。おしつぶされる兵士の悲鳴。そいつは、長い体をくねらせながら、前進をはじめた。
 モルガだ!うしろの地面も、つぎつぎともりあがり、モルガが飛び出してくる。その数5頭。
 かなりまえから、この5頭のモルガは、地下をもぐってしのびよっていたにちがいない。

後退する共和国軍
 状況がつかめると、帝国軍は勢いづいて、ふたたび攻撃をしてきた。一方、共和国側は、妨害電波で指揮が徹底していないこともあり、応戦するが効果がない。
 ガイサックが、ロングレンジガンでビームを放っても、雨で拡散されて、破壊力は半減している。装甲のとくにあついモルガには通用しないのだ。
 逆にモルガの体あたりをくらって、おしつぶされてしまった。じりじりと後退する共和国軍。

「大尉、モルガです!モルガ5頭が接近中!」
悲鳴に近い声で、副官がさけぶ。
 丘の中腹にさしかかったモルガは、稲光の中、くっきりと、その巨大な姿をあらわした。
 地面をはい、ゴルドスの体をつたわって、バラン大尉にもはっきりとその振動はつたわってきていた。
 まさかと思っていた、大尉の心配が的中してしまった。
「近すぎてゴルゴドスのロケット弾もつかえないな。仕方がない、体あたりだ。モルガの2,3頭はつぶせるかもしれん。
 副官、きみたちは残った兵士をつれて後退だ。援軍との連絡はとりつけろ。妨害電波は、そう広い範囲ではないはずだ。
 けっして援軍をまきぞえにするな」
 そのとき、数本のビームがモルガをつらぬいた。爆発するモルガ。

ゴジュラス登場!
 一瞬ひらめく稲光が、巨大な影をくっきりと浮かびあがらせた。
 じょうぶな尾で、一番近くにいたゲルダーをふっとばす。木をなぎたおし、おしのけ、力強く歩きはじめたゴジュラス。そのうしろにも、2頭のゴジュラスがいる。
「オオッ」
バラン大尉は、おもわず声をあげていた。
 ゴジュラスがこんなにもたのもしく見えたことはなかった。逃げようと、あわてて動きはじめたモルガをガシッとふみつけ、そのままグッとおさえつける。動こうにも動けない。ふいに全身のあちこちから、黄色い火花がちって、機能を停止した。
 残る3頭のモルガは、このあいだに体勢をたてなおすと、多弾頭ミサイルを発射してきた。ズガァーンとまばゆい光がきらめいた。ミサイルが、後続のゴジュラス1頭に集中、腹部を直撃した。さすがのゴジュラスも、生命体をやられたらしく、小山がくずれるように大地にぶったおれてしまった。
 先頭の1頭と残る1頭は、一瞬おくれて、30ミリビームをモルガに撃ちこんだ。2頭がふき飛ぶ。残る1頭のもるがも、先頭のゴジュラスが76ミリ砲の連打で粉砕してしまった。
 こんどは帝国側が総くずれだ。逃げようとするゲーターをうしろのゴジュラスが76ミリ砲でしとめた。

「ジョーよくやった」
 妨害電波が消えた。すべてのゲーターがやられたようだ。
「ジョー、よくやった」
 ゴジュラスのパイロットどうしの交信がとつぜん、バラン大尉の耳に飛びこんできた。
『ジョー!?』と思うまもなく、ゴジュラス隊からの連絡がつづく。
「大尉、申しわけありません。ゴジュラスが落雷で興奮して、1頭が勝手に動きだしたものですから。おとなしくさせるのに時間がかかって・・・」
「わかった。とにかく、次の攻撃にそなえろ。やられた1頭は、こちらから救護隊を出して調べさせる」
 バラン大尉は、ゴジュラス指揮官のことばをさえぎると、手短に指示をあたえた。

 森林のあちこちで炎があがっていたが、ふりしきる雨で、やがて下火となっていった。あちらこちらに、メカ生体の死体がころがっている。
われわれゴジュラス隊が、はじめから戦線に加わっていれば、こんなにやられることもなかったろうに」
 ジョーはつぶやくと、自分の未熟な操縦技術にくちびるをかみしめるのだった。
『ゴジュラスにはじめてであったのは、1年くらいまえだった。
 両親と生きわかれ、その生死さえ知ることができないわたしは、毎日、地球人居住地の相談所へいっていた。
 両親をさがさせてくれとたのんでも、相談員はつめたかった。
「戦争中で、どうすることもできません」
と、同じ答えをくりかえすばかり。
 わたしは、よく泣きさけんだものだった・・・・・・』

ゴジュラスとのであい
『そんなある日、わたしはターナー少佐によびだされたのだった。
 あとでわかったんだが、少佐が地球人を見舞いにこられたとき、わたしの相談所でのようすを見ていたという。
「きみにあげたいものがある。生き物好きなそうだから、きっと喜んでもらえると思うよ」
 ニコッと子供っぽく笑った顔からは、帝国軍兵士をふるえあがらせている英雄だなんて、まったく想像できなかった。
 わたしがつれていかれたのは、第2師団の、メカ生体操縦訓練所だった。わたしは立ったまま、しばらく動けなかった。わたしの見たものは、金属でつくられた、動物型の戦車。そうしか見えなかった。
「あれがゴジュラス。きみにプレゼントしよう。」
 わたしは、おどろいた。
「エッ、でも・・、あのー、生き物・・・」』

親とあうために
『それから数日後、わたしはゴジュラスの乗務訓練生になった。
 わたしはそこで、ゾイド星の歴史も知った。そして、わたしが両親とめぐりあうためには、この戦いを終わらせなければならないことも・・・・・・。
 わたしは、ゴジュラスという生き物に対する興味から、乗務訓練を受けたのだが、親をさがすには、戦いに参加して、1日もはやく終わらせるしかないと思うようになったのだ。
 わたしだって戦争は大きらいだ。殺しあうなんて最低だ。でも、今はそんなことをいっていられない。
 憎しみにもえたゼネバス皇帝は、もうだれのことばにも耳をかさなくなり、日ましに軍備増強ばかりをさけんでいるらしい。
 それに、あの冒険商人たちが、悪どく皇帝にとりいっているとなると、これはたいへんなことになる。
 なんとしても帝国の中枢をたたき、皇帝の目をさまさせなければ・・・・・・』

 ジョーはターナー少佐から聞いた、ヘリック大統領、ゼネバス皇帝兄弟の話、その父ヘリック王の話などを思い出していた。
『心そこ憎むなんてことが、本当にあるのだろうか』
 ゴジュラスを配置につかせながら、ジョーは、遠くゼネバス帝国にいるはずの、両親のことを思っていた。

共和国側に援軍が到着
 ゴジュラスの出現で、さすがに敵は警戒したのか、なかなか攻撃をかけてこない。
 偵察隊のグランチュラからの連絡も、応答なかった。敵はどう出てくるのだろう。偵察隊を出すしかなかった。
 バラン大尉が、指令を出そうとしたとき、
「大尉、援軍からの連絡です。まもなく到着です。」
 副官がうれしそうにさけんだ。
 兵士のあいだから、完成があがる。巨大なゾイドマンモスがあらわれた。鼻を高だかとさしあげて、こたえるマンモス。
 つづいてビガザウロ2頭。これは輸送用だ。1頭は背中のラックに、バリゲーターを2頭。もう1頭はバリゲーターとアクアドンを1頭ずつつんでいる。
 さらに重装備したゴルドス2頭がいる。
 バラン大尉と短いうちあわせをすると、支援隊は展開をはじめた。

赤い巨体あらわれる
 アクアドンが川に飛びこんだ。そのまま川をもぐって峡谷をくだり、帝国軍の戦力を偵察するのだ。
 雨は小やみになっている。空がしらじらと明けはじめた。

 夜明けの空に、アルダンヌの森からジョラタン峡谷にむけ、あざやかなオレンジ色のラインがひかれた。
 共和国軍のいっせいロケット攻撃だ。峡谷の入り口のむこう側でつぎつぎにおこる大爆発!数分後、こんどはもう少し峡谷に入ったあたりに、オレンジのラインがひかれた。
 勇猛な帝国軍をおこらせるには十分だった。
 地ひびきと、森の木がつぎつぎとたおれる音がする。
「いよいよくるぞ、準備はいいな」
バラン大尉が注意をうながす。やがて数本の強烈なビームが飛んできた。
 そして、森の中から小山のような赤い巨体があらわれた。巨大な角が小山からつき出ている。
 帝国軍の強力戦闘メカ生体、レッドホーンだ。
 敵の主力がついに姿をあらわした。
 ビームを四方に放ちながら、いっきに共和国軍の中央に突進しようとする。
 その前に、ゴジュラスが立ちはだかった。共和国、帝国の最強メカ生体どうしの、宿命の対決だ!
 ようすをうかがうレッドホーン、ゴジュラスのまわりをゆっくりとまわりはじめた。近すぎて飛び道具はつかえない。レッドホーンの動きにあわせて、体のむきを、少しずつかえるゴジュラス。
 レッドホーンにつづいて、マーダーやゲーターも出てきた。ゾイドマンモス、バリゲーターなどが応戦する。

 ゴジュラスのわずかなスキをついて、レッドホーンがぐっと近づく。巨大な角で、2度、3度、ゴジュラスの腹部をつきあげる。
 たまらず後退するゴジュラス。両手でレッドホーンの角をつかもうとするが、うまくいかない。
 こんどはレッドホーン、勢いをつけてゴジュラスに体あたりをかけた。
 ガガーン!コクピットにするどい衝撃がつたわってくる。
「ジョー、だいじょうぶか」
 もう1頭のゴジュラスは、残る2頭のレッドホーンを相手にしていて、応援どころではない。
「だいじょうぶです。それにしても強烈な体あたりだ。さあどうした!このあばれんぼう」
 ふいにゴジュラスの片足が、地面にしずみこむ。モルガがほった穴の天井をふみぬいたらしい。
 バランスをくずして、たおれるゴジュラス。
 ここぞとばかり、レッドホーンが突進してくる。
 ガッ、ガガガガーン!するどい角がゴジュラスの胸につきたてられてしまった。
 一瞬、ゴジュラスもレッドホーンも動きを止めた。そしてレッドホーンがゆっくりと、あとずさりする。

苦しむゴジュラス
 グァオーン!苦しそうにうめくゴジュラス。少し体をひいたレッドホーンのあごのあたりから、霧状の液が発射され、ゴジュラスの胸にかかった。たちまち白い泡と蒸気がたちのぼる。レッドホーンの必殺兵器、高圧濃硫酸だ。

 目まぐるしく動く計器、光る警報ランプ。
「まずい!」
 思わず赤いレバーに目をやるジョー。しかし、ここでそれをつかっても意味がない。
 ゴジュラスの目がギラリと光った。怒りが全身にみちている。
 レッドホーンは、硫酸でいためつけたゴジュラスの傷口を、さらに広げようと、もう1度、角をつき出した。こんどはゴジュラスが、角をうまく受けとめた。もう一方の手をレッドホーンのしたあごにかけ、そのまま両腕をひねった。
 ゴジュラスはグウーッとレッドホーンの頭をおさえつけながら、上半身をゆっくりとおこす。
 苦しまぎれに、レッドホーンはふたたび濃硫酸を発射するが、これは効果がなかった。

エネルギーブースト
 レッドホーンの背にのしかかるゴジュラス。対空ビーム砲や3連電磁砲がちぎれ飛ぶ。
「よーし、いまだ。エネルギーブースト!!」
 ジョーの手が、赤いレバーをおしさげた。
 すさまじいパワーで、ゴジュラスが両手をひろげる。バキイッと音をたてて、レッドホーンの頭の上半分が、そっくりはがされた。スパークの火花がちり、がくっと前足をおるレッドホーン。もはや戦闘能力はない。ゆっくりと立ちあがったゴジュラスは、勝ちほこったように、手に持ったレッドホーンの頭を、高だかとあげると、ポーンと放り投げた。
「ジョー、バラン大尉だ。きみの戦いぶり、見せてもらったよ。2年くらいで、よくそこまでウデをあげたな。その調子でたのむぞ」
「ハイッ」
『どうして名前を知っているんだ』
ジョーは不思議に思ったが、いまは考えているひまはない。
 敵を後退させて進む仲間のところへと、ジョーは急いだ。

マンモスも大活躍
戦場は峡谷の入り口へ移っていた。ゾイドマンモスが、マーダやゲータをふみつぶす。
 1頭のマーダが両足のマグネッサーシステムでジャンプ。マンモスのコクピットをおそった。しかし、マンモスは長い鼻で、らくらくとたたきおとしてしまった。
 川岸では、湿地に強いバリゲーターが、活躍していた。

帝国軍が退却
 ついに帝国軍が退却をはじめた。陽は西空にかたむいていた。2日間におよぶ、アルダンヌの戦いも、ようやく終わろうとしていた。
 共和国、帝国とも、多大のぎせいを出し、兵士、メカ生体とも、あちこちに死体をよこたえている。
 バラン大尉は、戦うたびに、こんな光景は2度と見たくない、と思うのだが・・・・・・。しかし、今回ほどいやな思いをしたことはなかった。
 むかしとはちがう。まったく新しい戦いの時代がやってきたことを、あらためて実感したからだった。

新しい戦いの時代へ・・・・・・
 アルダンヌの戦いは、共和国と帝国の戦いの中では、小規模なものであった。しかし、この戦いは、バラン大尉も感じたように、それまでの戦い方を一変させていた。
 地球人による武装強化で、メカ生体は生体としてのあつかいより、メカとしてのあつかいにウエイトがおかれるようになっていった。
 ゼネバス皇帝は、ますます武装強化をはかっていき、帝国は、狂気の国へと変わっていく。
 一方、共和国側は、日ましに重装備されていく帝国側のメカ生体を見るにつけ、国家としての危機をさとった。そして、アルダンヌの戦いの翌年、ゾイド暦2033年、共和国議会はついに国家緊急法(コードネーム、Xデー)を発令したのだった。
 主力メカであるゴジュラス、ゾイドマンモス、ゴルドスは武装を一層強化された。
 改造第1号のゴジュラスは、ターナー少佐のはからいで、ジョーが搭乗することになる。
 のちにジョーは、その勇気と戦闘能力で、『神風ジョー』とよばれるようになり、共和国の子供たちにもあこがれのパイロットになっていく。

アイアンコングが完成
 一方、超高速飛行用にサラマンダーの素体の改造が、急ぎ開始された。この武装メカ生体サラマンダーの出現は、もともと飛行するメカ生体の改造に弱い帝国側のどぎもをぬいた。
 帝国首都への攻撃もさかんになり、両国の戦いは終わるかにみえた。
 しかし、帝国側も必死に防戦をつづけた。その間、帝国でも創造を絶するメカ生体の改造がすすんでいた。
 情報がヘリック大統領の耳にとどいたときは、すでにアイアンコング1号の改造が終わっていた。
 ヘリック大統領は、全軍を投入した決戦を決意した。
 アイアンコングの2号めが完成するまえに、なんとしても、この戦いを終わらせなければ、中央大陸がたいへんなことになるのは目に見えていたからだ。

ゼネバス皇帝が脱出
 ゾイド暦2038年9月。必死に猛攻撃にたえるアイアンコングに守られて、ゼネバス皇帝は、シンカーで中央大陸を脱出していった。力つきたアイアンコングの大爆発を背に、シンカーはゴルゴダス海峡をこえ、暗黒大陸へと、飛びさっていく・・・・・・。

ゾイド星に平和はくるか
 暗黒大陸――ゼネバス皇帝とヘリック大統領の父、ヘリック王が、かつて中央大陸のみにくい争いを終わらせようと、むかった大陸。ヘリック王の計画は実を結び、全部族を統一した共和国が誕生したのだった。
 しかし、共和国誕生のうらに、ヘリック王のすて身の計画があったことは、息子ヘリック2世とゼネバスが、父の遺書ではじめて知ったのだった。
(・・・・・・厚い氷にとざされた暗黒大陸には、憎しみと、戦うことのみに炎をもやす軍団がいた。・・・・・・やつらはわたしの策略にのった。・・・・・・結果、中央大陸はひとつにまとまり、平和がおとずれた。
 しかし、そのために罪もない人たちの命がたくさん失われた。平和のために犠牲となったのではない。わたしの、悪魔の策略によって犠牲になったと、ずっと心をいためてきた。
 わたしはけっして尊敬される資格のある人物ではない。
 わが息子たちよ。この大陸の平和は、おまえたちふたりの、心ひとつにかかっている・・・・・・)

 共和国はヘリック2世が大統領、ゼネバスが共和国軍最高司令官として二人三きゃくでひきつがれた。
 しかし、平和は長くはつづかなかった。好戦的な弟ゼネバスは、平和であることに満足できず、兄と争うようになる。しだいに不信感をいだきあうふたり。共和国議会もゼネバスを快く思っていなかった。
 やがてザねバスは、兄への、そして共和国への憎しみを胸に、共和国をさっていく。そしてゼネバス帝国をきずくと、共和国へ戦いをいどんできたのだった。
 依頼60年におよぶ戦いの歴史は、ゼネバス皇帝の暗黒大陸への脱出という形で、いちおうの幕をおろすこととなった・・・・・・。

 ゼネバス皇帝は、暗黒大陸で新たな軍隊を組織し、ヘリック大統領への復しゅうを誓っていた。
 偉大であったヘリック王の願いもむなしくふたたび暗黒大陸の軍団を利用しようとしている。それが平和のためではなく、復しゅうのためだとは・・・・・・。
 兄ヘリック78歳、弟ゼネバス76歳。
 新たな悲劇が、またはじまろうとしていた。